廃業する会社が所有する不動産がある場合には、名義変更する必要があります。
具体的には、他人や身内に譲渡(売却)して現金化したり、役員や親族に贈与をして、登記名義を変更することになります。
買い手を新たに探して売却するには、それ相応の時間もかかりますので、廃業手続きが長期にわたることになります。
譲渡による名義変更
会社が所有する不動産を売却した場合には、「売却価格」と「会社の帳簿価額」との差額について、売却益として法人税・住民税・事業税が課税されます。
(繰越欠損金や退職金、事業を整理するための費用などの合計金額が、その売却益の金額を上回っていれば、売却した事業年度は赤字となるため、納税の心配はありません。)
ただし、売却益があり納税の可能性があるときは、会社が解散日現在において債務超過の状態かどうかにより、いわゆる「期限切れ欠損金の繰越控除」が適用できるかどうかがかわるため、「解散日の前」に売却するか、「解散日後」に売却するかにより、税金が大きくかわることがあります。
このように、売却するタイミングだけで、税金が大きくかわることがあるので、含み益がある不動産を所有する会社を廃業する場合には、解散前のなるべく早い時期に、税理士などの専門家に、税金のシミュレーションをしてもらい、売却する時期を決めることにより、結果として、最終的に会社に残る財産(残余財産)をなるべく多くための対策が必要となります。
贈与による名義変更
役員への贈与
会社が個人(役員)に贈与することも可能ですが、その場合には、贈与時の時価に対して、法人には「法人税」がかかり、役員である個人には「所得税(給与所得)」がかかることになります。
役員以外の親族などへの贈与
会社が個人(役員以外の親族など)に贈与する場合にも、贈与時の時価に対して、法人には寄付金の損金算入限度額を超える金額に「法人税」がかかり、役員以外の親族などである個人には「所得税(一時所得)」がかかります。
贈与する場合のまとめ
結果として、いずれの場合にも、二重に税金がかかることになりますので、安易に登記手続きを進めると、あとで税金の負担が大変なことになりますので、必ず税理士などの専門家に相談することをオススメします。
名義変更で消費税の納税が必要となるケース
さらに、会社が消費税の課税事業者の場合には、譲渡と贈与いずれの場合にも、建物などの時価にかかる消費税も納付することになり、思いがけない「消費税の納税」が必要となるケースもあります。
なお、土地については、消費税が非課税ですが、会社の納税額の計算方法が、一般原則課税方式の場合には、課税売上割合が減少するため、納税額が増える可能性が高くなります。
消費税の節税をするために、会社が消費税の免税事業者になってから解散するという選択肢も考える必要があります。
最後に
「会社を廃業するための費用」をなるべく抑えることは大切ですが、それだけでなく「会社が支払う税金」も考慮しておく必要があります。
不動産の売却手続きを進めていくと、過去にさかのぼって訂正することはできません。
したがって、会社の廃業をお考えの場合には、事前に詳しい税理士などの専門家に相談して進めていくことをオススメします。
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