法人が解散した後に就任した清算人は、清算事務を行うことになります。
法人が解散した場合において、その清算事務を行う期間について、引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、報酬や給与を支払うことは可能です。
清算人の報酬については、取締役の規定が準用されるため、定款または株主総会の決議で報酬を決める必要があります。
清算人が行う清算事務
- 現務の結了(締結している契約の履行や解約など)
- 債権の取立てと債務の弁済(債権の回収・財産を売却・債務の返済)
- 残余財産の分配(株主への分配)
- 帳簿資料の保存(10年間)
清算人などへの報酬にかかる税金や社会保険料
清算中の期間について、清算人などへ毎月報酬を支払う場合には、解散前の報酬と同様に、給与所得として所得税や住民税がかかります。
さらに、社会保険料(健康保険・厚生年金)についても、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出していない場合には、引き続き保険料がかかることとなります。
このように、引き続き毎月報酬を支払う場合には、いつまでも給与事務が終わらないだけでなく、会社負担の社会保険料の支払いが発生するため残余財産が確定せず、廃業の手続きが長期化する原因となります。
したがって、清算中の期間にかかる清算人への報酬について、解散時に退職金として一括して支給する方が、税金や社会保険料の負担が少なくなるだけでなく、スムーズに廃業手続きを完了することが可能となります。
ただし、退職金として支給する場合には、解散の決議・清算人選任を行う臨時株主総会において、この分の支給に関する決議を行い、直ちに支給するほかに、退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)の作成や保管・退職金から差し引く所得税・住民税の計算が必要となります。
支給金額については、清算事務の内容などを勘案して、不相当に高額でない場合には、損金の額に算入(経費処理)することができます。
参考:国税庁のHPの質疑応答事例
■ 解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/05.htm
最後に
「会社を廃業するための費用」をなるべく抑えて、最終的に残る手元現金をなるべく多くすることが大切ですが、それだけでなく「会社が支払う税金や社会保険料」のほか「株主や役員が個人として後々払うことになる税金」も考慮しておく必要があります。
登記や申告などの廃業手続きを進めていくと、過去にさかのぼって訂正することは、原則としてできないので、詳しい専門家に相談して進めていくことをオススメします。
会社廃業手続や開業支援のほか、中小企業やフリーランスの方への「税金の申告や相談」のほか、個人の方への「確定申告や相続手続きの代行」など、お金にまつわる手続きについて、幅広くサポートしております。