廃業する会社の税務申告の10つの注意点と計算方法を解説!

会社が廃業し解散した場合には、解散前と同じように、それぞれの事業年度ごとの「所得金額(儲け)」に対して、法人税などが課税されます。

ただし、解散後の税務申告は、それまでの通常の申告とは違う「特殊な計算」や「特別な取扱い」が多くあります。

もし、申告に誤りがあった場合には、株主への分配などの手続がすべて終わった後、しばらくしてから、税務署などから連絡があり、すでに提出した申告書の修正が必要となるだけでなく、追加の税金の支払いや、その後に、株主へ支払った分配金の一部の返還請求手続きが必要となることもあります。

さらに、株主の分配額について税金(みなし配当)が課税されているときには、株主全員の源泉所得税を再計算して、その差額について、税務署に「源泉所得税の過誤納還付請求」の手続きが必要となることもあります。(あわせて、還付税金の株主への一部返還も必要となります)

したがって、このようなことにならないように、スムーズな廃業手続きをすすめるためには、解散後の税務申告は、会社の廃業手続きの中でも、一番注意して進めていく必要があります。

今回は、廃業する会社の税務申告する際の注意点について解説します。

廃業する会社の税金計算について

通常の事業年度と同様に「各事業年度の所得」に対して法人税が課されます。
(税率も通常の事業年度と同じです)

ただし、解散後の事業年度は、1年に満たない事業年度となる場合が多いため、下記のような「特殊な計算」や「特別な取扱い」があります。

法人税などの軽減税率の計算

資本金1億円以下の法人については、年間800万円までの所得に対し、軽減税率が適用されます。
事業年度が1年に満たない場合には、月割計算が必要となります。

減価償却の限度額の計算

減価償却資産の償却の方法(旧定額法・旧定率法・定額法・定率法)によって、償却率又は改定償却率を月割計算する必要があります。

交際費の定額控除限度の計算

交際費は、資本金1億円以下の法人については、定額控除限度の金額までは、損金(経費)に算入することができます。
事業年度が1年に満たない場合には、月割計算が必要となります。

地方税の均等割

地方税の均等割は、自治体によって若干違いますが、赤字であっても、年間7万円が課税されます。
事業年度が1年に満たない場合には、月割計算が必要となります。

特別償却(減価償却費の特別計算)

解散事業年度・清算事業年度・残余財産確定事業年度

租税特別措置法に規定されている一定の設備等を取得した場合の「特別償却や準備金」は適用することができません。

欠損金の繰戻還付(過去に納付した法人税の還付を受けられる制度)

解散事業年度

青色申告などの一定の要件を満たしている場合には、「解散の日前1年以内に終了した事業年度」又は「解散の日の属する事業年度」のいずれかに欠損金があるとき(欠損事業年度)は、繰り戻し還付が認められ「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出し、過去に納付した法人税の還付を受けられる場合があります。

清算事業年度・残余財産確定事業年度

清算事業年度については、欠損金繰戻還付は通常事業年度方式のため、当期が赤字で前期(当期首日前1年以内に開始した事業年度)が黒字の場合にのみ適用があり「欠損金の繰戻しによる還付請求書」の提出期限は、確定申告書と同時に提出することが要件となります。

欠損金の繰越控除(今期の黒字と過去10年以内の赤字を相殺できる制度)

解散事業年度・清算事業年度・残余財産確定事業年度

いずれの事業年度についても、「欠損金の繰越控除」は適用できます。
ただし、通常事業年度と同様に、中小法人以外の法人については制限があります。

期限切れ欠損金の損金算入(今期の黒字と過去10年以上前の赤字を相殺できる制度)

清算事業年度・残余財産確定事業年度

平成22年税制改正によって、法人税の課税方式が損益法へ変更となったため、残余財産がないにもかかわらず、債務免除などにより「清算事業年度」や「残余財産確定事業年度」において、課税所得が発生してしまうケースが出てくることとなりました。

このため、会社が解散して『残余財産がないと見込まれる』ときは「期限切れ欠損金」の損金算入」が認められることとなりました。

『残余財産がないと見込まれる』かどうかの判定は、事業年度終了時の現況によるため、期限切れ欠損金の損金算入を適用しようとする事業年度末において、実態の貸借対照表が債務超過であることが必要となります。

なお、解散事業年度については適用できないので、所得がある場合には、退職金などの経費について、事前に考慮して支給時期を決めないと、トータルの税金負担が大きく変わるので、特に注意が必要です。

貸倒引当金等の繰入れ

残余財産確定事業年度

解散した法人の申告は、この事業年度の確定申告が最後の申告となりますので、引当金の繰入れはできません。
(過去に計上した引当金については、戻入の経理処理が必要となります)

事業税の損金算入(未納付の事業税の経費化)

残余財産確定事業年度

地方税の事業税については、翌事業年度が存在しないので、残余財産確定事業年度の事業税等の額は、その事業年度の損金(経費)に算入することになります。

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